心がそわそわしていた、というほどでもない。
何かひとつの課題をこなしたあとには、目をつむろう、と決めていたのだった。
それでこの昼下がりも、文机を前に椅子を引き、その上にあぐらをかいて目を閉じた。
* * *
紫がかった銀の大海。その水面のようなものが、ぼくの浮遊する体の下方一面に広がっている。上方は満天の星空、銀河のまっただ中の宙空が天蓋を成している。
「
ふとそう思って、はっとした。
ぼくが今行きたいのはプレィアデスじゃない。
虚飾だとしても、幻想の次元のものだとしても、ぼくは──ナミソラに行きたい。
あの王宮へ、あの部屋へ。
そう思い直して、胸に呼びかけた。
「みかげ、導いて──」
ふわりとそよ風が抜けるように胸がひらき、見慣れた姿の魔術師が目の前に現れた。
みかげ、ぼくが恋い慕うひと──ぼくがこの地上で最も美しいものを詰めこむように描いてきたひと。
その魔術師みかげが、くすりと笑って、左から右へと円を描くように光の扉を描きあらわした。そして声で合図することすらなく、今度は右から左へ扉のふちをなぞり、光をひらく。
「行こう」
ぼくとみかげの意思が重なって、ぼくは光の扉の向こうの世界へと誘われた。
* * *