この作品は、星乃すばるがライフワークとして描いている「ナミソラ」世界の物語のひとつです。
壮大な世界の謎を解き明かしたり、冒険の旅をしたりするわけではなく、ただ「ナミソラ世界に日々あふれている魔法を描こう」というコンセプトで執筆した連作短編です。
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執筆は2020年の初春から、『天使の宝玉』を書いていた4月をはさみ、初夏頃までだったと記憶しています。何度かの小さな改稿を経て、2023年初頭に最終話に加筆をし、この形での公開になりました。
ナミソラの前作や同時期の作品(『星詠みの国のプラネテア』や『天使の宝玉』)に比べ、七転八倒して実力以上のものを書こうという気負いもなく、自分の可能性を広げようと志した実験的な要素もなく、ただ「こんな魔法があったら……」というネタを羅列して書きはじめ──。
2023年までに書いたすべての小説の中で、一番背伸びせずに書けた「等身大の自分」の作品のように感じています。
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初稿時には友人諸氏からいろいろな貴重なアドバイスをいただきました。特に第3話の風の子の立ち回り、第4話の楽器習得シーンなど、「らしさ」や「わかる」感じが(少しでも)高まったのは、当時原稿を見せ合っていた皆のおかげです。
また、唯一、漫画版の世界から抜け出してきたようなノリでしゃべる第5話登場の給仕長ひよりは、改稿時にはマイルドな「給仕の少女」に直されていたのですが──サイトでの公開にあたり、初稿の彼女(おなじみのひよひよ)に戻されました。
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制作時の日記などには、この作品は「るりなみ版」と書かれています。
というのも、制作中は、主人公の王子しずみが「るりなみ」、魔術師みかげが「ゆいり」という名前であったからです。
ナミソラの本編物語や時系列とは少し違う世界観で、しずみ・みかげの人柄や境遇も少しだけ別人……というつもりで書き出した、という理由もあったのですが、結局、ほぼ「ただのしずみとみかげだった」というところに着地したため、普通のナミソラものという扱いになり、ふたりの名前も昔ながらのものに。
作者の中で「この版のオリジナル」と思っている設定は、今では王宮の構造くらいでしょうか……。とはいえ、この世界もまた、最終話の星砂の世界のひとつ──「光の玉手箱」におさめられた王宮や人物たちなのかもしれません。
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サイトでの少しずつの公開にあたっては、皆様にお伝えいただいた感想やいいねボタンなどに、大変助けられました。心より感謝いたします……!!
「こんな魔法があって〜、こんな事件が起こって〜」というネタ出しだけは大量にしたため、第1話や第2話のような完全な単作としてなら、今後も続きがあるかもしれませんが……(しずみの妹王女のぞむが出てくるお祭りものもありました)、現在は続編よりも、いつか挿絵を描けたらという気持ちが強いです。
気長に(期待せずに……?)お待ちいただければ幸いです!
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お読みくださって、ありがとうございました。
また、どこかの世界で。
2023年2月 星乃すばる
『波空国幻想譚 〜光の玉手箱〜』
2020年 春から夏にかけて(2023年加筆)